■擁壁の設計が適切でなかったもの 不当と認める国庫補助金 約140,000,000円
■事業主体 K県 平成17,18年河川災害復旧工事
■工事の概要 |
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この補助事業は、K県が、○○地内において、台風により被災した一般国道○○○号の車道部等及び一級河川○○川の護岸を復旧するため、土工、山留工等を実施した工事。 |
このうち山留工は、21本のアンカー付の鋼管杭(外径508.0mm、杭長20.5m〜26.0m)を建て込
んだ山留壁(延長計80.0m)で、アンカー頭部には鋼製台座、
腹起し材、ブラケット等が設置されている。 このうち腹起し材は、鋼製台座プラス2段に設置されたH形鋼で構成され、H形鋼を支えるため三角形に組み立てた等辺山形鋼
のブラケットを上下2段に鋼管杭に溶接して固定している。 |
同県は、本件擁壁の設計を「グラウンドアンカー設計・施工基準,同解説」(社団法人地盤工学会編等(以下「基準等」という)に基づいて行ってい
た。
そして、ブラケットのうち、下段ブラケットについては基準等に基づき設計計算を行い、下段ブラケットと鋼管杭との溶接部には、腹起し材を介してアンカーの張力により最小77kN〜最大106kNのせん断力が作用するとしていた。そして、このせん断カに対して安全となる必要溶接長を、溶接部の許容せん断応力度72N/mm2に基づき135mm〜185mmと算定して、下段ブラケットと鋼管杭との接合部分(長さ350mm)の全長を溶接すれば、溶接長が必要溶接長を上回ることから、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、下段ブラケットと鋼管杭との溶接部には、アンカーの張力による鉛直力と腹起し材の自重により、せん断力と曲げモーメントが同時に作用することとなる。そして、基準等によると、このような場合には、せん断力と曲げモーメントを合成した応力度に対して安全となるよう設計する必要があるとされているのに、同県では、せん断力のみが作用することとして設計していた。
そこで、本件下段ブラケットについて、基準等に基づき改めて設計計算を行ったところ、鋼管杭との溶接部(長さ350mm)に作用する応力度は195N/mm2〜266N/mm2となり、前記の許容応力度72N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全ときれる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件擁壁(工事費相当額約217,000,000円、うち国庫補助対象額
約208,000,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額約140,000,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。 |